5万7000人が加入する大型の健康保険組合(健保組合)が解散していたことがわかった。倒産以外で健保組合が解散するのはきわめて異例だ。「高齢者医療改革で負担が増え、保険料率の引き上げが避けられないため」というのがその理由だ。健保組合に加入していた人は「政府管掌健康保険(政管健保)」に移ったが、そうなると国庫負担が増えてしまう。「高齢者の医療費を健保組合に肩代わりさせ、財政再建を図る」という制度そのものの狙いが揺らぎ始めた形だ。
自前で組合を持つ意味がなくなった!!
2008年8月1日に解散していたことがわかったのは、陸運大手の西濃運輸(岐阜県大垣市)の関連企業58社のうち、31社の従業員と扶養家族約5万7000人が加入していた「西濃運輸健保組合」。西濃運輸の広報課の説明によると、07年度には、老人保険制度と退職者医療制度への負担金が35億8700万円だったのが、08年度は前年度比約62%増の58億円にまで増加。これに耐えられなくなったのが解散の原因だという。
具体的には、08年4月に高齢者医療制度が改革されたのにともなって、65-75歳の「前期高齢者納付金」25億2500万円と、75歳以上の「後期高齢者支援金」21億1000万円の負担を、新たに強いられることになった。この組合の保険料率は、月収の8.1%だったが、この負担増をまかなうためには、これを10%以上に引き上げる必要が出てきた。ところが、「政管健保」の保険料率は、これよりも低い8.2%だ。そのため、
「自前で組合を持って、10%の保険料を徴収する意味がなくなった」
として、解散を決めた、というのだ。
この組合に加入していた組合員が移行した「政管健保」は、社会保険庁が運営する医療保険で、中小企業の従業員と扶養家族、約3600万人が加入している。全国に約1500ある健保組合(約3000万人が加入)への国庫負担は50億円なのに対して、政管健保への国庫負担は8250億円。今回の西濃運輸のようなケースが増えれば増えるほど、国庫負担が増えていく、という構図だ。