公取委立ち入りで苦境 JASRACデジタルによる算定法困難

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   公正取引委員会に、市場を独占して新規事業者の参入を排除しているという疑いで立ち入り検査を受けた日本音楽著作権協会(JASRAC)。問題となっているのは、放送事業者と結んでいる「包括契約」だが、それ以外の楽曲使用料の徴収方法は見出せていない。「合理的で、利用者にとっても便利なものなのになぜ? 」というのがJASRACの本音のようだ。

「公取さんにいきなり来られてうれしい事はない。正直『どこが問題なのか』という気持ちが強かった。包括契約に問題があると言われて、二重にびっくりした」

   加藤衛理事長は2008年5月14日の定例記者会見で、「JASRACの公式コメントではない」としながらも、このように公取委の立ち入り検査を振り返った。 JASRACは2008年4月23日に公取委から、独占禁止法違反(私的独占)の疑いで立ち入り検査を受けたが、問題とされたのは、NHKや民放各局と1979年から結んでいる「包括的利用許諾契約」について。「包括契約」は、放送した回数や時間ごとに計算するのではなく、曲数に関係なく事業収入の1.5%に当たる金額を放送使用料として徴収するというものだが、公取委はこれを「市場を独占し、新規参入を阻害している疑いがある」と判断したとみられる。

   加藤理事長は「具体的にどうことなのか(公取委に)お聞きしたが、それについてお答えはなかった」としており、包括契約のどこに私的独占の疑いがあるのかはJASRACも把握できていない。分かっているのは「放送事業との包括契約」に疑いがもたれているということだけだ。

「具体的な理由が分からない」という不満

「包括契約に問題があるといわれてビックリ」と話すJASRAC加藤衛理事長
「包括契約に問題があるといわれてビックリ」と話すJASRAC加藤衛理事長
「(立ち入り検査の)具体的な理由が分からないのに入られるというのは多少の不満はあった。被疑事実が具体的でないのに、ああだこうだ推測してコメントを言うわけには行かない。コメントは差し控えさせていただいている」(加藤理事長)

と当面は調査結果を見守る姿勢だ。仮に独占禁止法に違反すると公取委が判断した場合は、排除命令が出されることになり、JASRACは苦しい状況に陥ることになる。

   JASRACにとってみれば、「包括契約」は、放送事業者からの要望で取り入れたもので、欧米でも広く定着している仕組み。「自由に楽曲が使われるということは、音楽の多様性を担保している。エンドユーザーの利益にも資するという自負があった」(加藤理事長)といった本音も漏れる。

   大量の楽曲を1曲ずつ把握する技術が待望されるなかで、JASRACは「包括契約」以外の楽曲使用料の徴収方法をまだ見出せていない。同協会は、デジタル技術による算定方法を試験的に導入しているとしているが、「現在、50局くらいでトライアルを行っているが、ある番組についてはできるが、24時間365日(楽曲を算定する)というのは難しい」というのが現状のようだ。

   JASRACの加藤理事長は、

「これ(立ち入り検査)はJASRACに背負わされている宿命なので、これについてはあまりかっかすることなく冷静に対処して、きっと結果いいことになるようにしたい」

と話している。

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