クレジットカードの本人確認が十分でない。こう断罪する判決が長崎地裁佐世保支部であった。利便性を重視してきたカード会社は困惑しているが、確認不十分の怖さも浮かび上がってきた。名前、番号、有効期限だけで使えるのは危険だ。
長崎地裁佐世保支部判決にカード会社困惑
「義務のない本人確認を、今後しなければならない。それでは、困りますね」
長崎県佐世保市の会社員男性(58)に対し、当時19歳の長男が無断で使ったクレジットカード代金の支払いを求めた訴訟の判決が2008年4月24日、長崎地裁佐世保支部であり、クレジット会社「クレディセゾン」の請求を棄却した。この判決に、同社広報室ではこう不満を漏らした。
新聞各紙によると、長男は、カード上にある名前、番号、有効期限だけで使えることを利用し、携帯電話のアダルトサイトで約300万円を使い込んでいた。父親の会社員男性が寝ているうちに、その財布からカードを抜き出して番号などをメモしていたという。
クレディセゾンでは、「カードは利用者に貸与しており、その管理責任は本人にある」と支払いを求めた。これに対し、被告の会社員男性は、「暗証番号の入力が不要な決済方法があることを事前に知らされていなかった」などとして、支払いを拒否していた。
そして、裁判で勝訴したのが会社員男性側。判決は、「第3者の不正使用を排除する決済システムだったとは言いがたく、被告の管理責任は問えない」として、本人確認をしなかった会社側の責任に言及した。
これに対し、原告のクレディセゾンは、「本人確認の仕組みを導入すれば、コスト的にそれなりの負担が生じる」と不満を示す。また、「利便性がなくなり、利用者数、加盟店数が減る可能性はある」と明かす。
会社員男性については、「不正使用したのが家族の場合には損害補填が適用されないという規約があり、男性も同意していた」と指摘。「判決は不服」だとして、今後、控訴する方向で検討している。