中国やインド、米国など世界的に石炭の需要が高まっている。石炭は火力発電や鉄鋼などに使われていて、オーストラリアや中国といった産出国のインフラ整備が追いつかないことや自然災害などがあいまって、価格が高騰している。
沖合いで積み出し船が何日も停泊
石炭価格の上昇は、産出国の積み出し港の整備などインフラが追いつかないことが大きな原因だ。海運業の関係者によると、「ニューカッスル港(豪州)などでは沖合いで何日も待たされている船舶が数十隻にも達している」という。
石炭エネルギーセンター(JCOAL)は、「石炭価格は2004年ごろからジワジワ上昇してきて、それが2007年夏以降に急上昇した。遅れているインフラ整備に豪州の水害が追い討ちをかけたといえる」とみている。
指標となっている豪州産一般(電力)炭のスポット価格は、07年1月に1トンあたり約51米ドルだったが、いま石炭がほしければ、1トンあたり2.5倍増の125米ドルを払わなければ手に入らない。なかでも鉄鋼に使う原料炭は、「電力炭とは質が異なり、採れる量も少ないので値段も倍以上違う」(JCOAL)と話す。
鉄鋼メーカー全体の原料炭の輸入量は06年度に7345万トンで、その6割を豪州から輸入している。新日本製鉄やJFEスチールなどは世界最大の鉱業会社で豪州と南アフリカに主たる採掘場をもつBHPビリトンと、2008年度に輸入する原料炭の価格を1トンあたり300米ドルで合意した。豪州産の原料炭は07年度に1トンあたり98米ドルだったので、約3倍に跳ね上がったことになる。
原料炭の値上げは3年ぶりで、「過去最高の水準」(JFEスチール)という。鉄鋼業は上昇するコストを、鉄を利用する自動車や建設、機械、家電などの業界にも負担してもらおうと、現在価格交渉に入っている。