世界で初めて「デジタル」の利益が「紙」の利益を逆転――経済誌が大々的にこう報じた日経新聞。いち早く「デジタル」に舵を切り、構造不況の新聞業界にあって、未来はとてつもなく明るい。こんな風に見えるが、内実はそう胸を張れるものではない。2007年12月期連結決算で、新聞事業の利益が半分近く減ったのが「逆転」の主な要因だ。日経新聞もまた「新聞総崩れ」の渦中にあるのは間違いなさそうだ。
「デジタル」と「紙」をうまく連動?
「日経の『デジタル』の利益が『紙』を逆転」と報じる東洋経済
「新聞総崩れの中、なおも新たな読者を獲得し、部数増を続ける日経。しかも情報サービス事業が育ち、世界で初めて『デジタル』の利益が『紙』を逆転、ライバル社は驚くばかりだ」
こういう書き出しで始まるのは、「東洋経済」(2008年4月12日号)の特集記事「『日経新聞』を読む人 読まない人」である。
同記事によれば、06年までに日経新聞の単紙読者率(日経だけを読む人の比率)は65.9%まで上昇。他紙はニュースサイトで朝刊の主要記事が読めるのに対し、日経は7割近くの記事は無料で見ることができないため、多くのビジネスマンは日経を買う。しかも、有料で記事を読んでもらうデータベース事業は好調。「デジタル」と「紙」をうまく連動させる新たな「新聞ビジネス」が日経にはある、といった内容になっている。
しかし、07年12月期のデジタルメディア事業の売上282億円といった数字が踊るのに対し、「世界で初めて『デジタル』の利益が『紙』の利益を逆転」という「大ニュース」を具体的に裏付けるような数字はなぜか出てない。
日経新聞社によれば、「『デジタル』の利益が『紙』を逆転」したのは、同社の2007年12月期連結決算。新聞の販売収入と広告収入が柱となる新聞事業の営業利益が135億円(営業利益全体の35.4%)だったのに対し、日経新聞デジタルメディア、日経マーケティング、QUICKなどのグループ会社で構成する情報関連事業(デジタル事業)が172億円(同45.0%)だった。
金融庁のEDINETに提出されている同社の有価証券報告書に掲載された「事業の状況」にもこれと同じ数字が並んでいるが、「東洋経済」が報じた日経の姿とは、随分違った姿が見えてくる。