セメント大手の三菱マテリアルが18年ぶりに国内産石炭の使用を始める――。このニュースがきっかけで、国内炭回帰の動きが広がる、とはやして石炭株が急伸した。しかし、国内で供給できる石炭の生産量はわずか。炭鉱の体制や人材も揃っていないことから、「国内産への回帰」とは程遠いのが現状だ。
三井松島など石炭株が急伸
「国内炭回帰」説はホント?
世界的な石炭価格の高騰を背景に、三菱マテリアルが18年ぶりに国内産の石炭(国内炭)を使用する、と報じたのは2008年4月3日の日経新聞。
日経QUICKによれば、「国内炭回帰の動きが広がる」との連想から、三井松島が一時、23円高の228円まで上げ、値上がり率は10%を超えたほか、三井鉱山は18円高の278円まで上げる場面があったという。
三菱マテリアルによれば、青森工場で使用する石炭量の3分の1にあたる2万トンを08年度からロシア産から国産に切り替える。同社はJ-CASTニュースに対し、「単純に海外炭に比べ、(国内炭の方が)コストが安く済むから」と、国内炭の使用を再開した理由を説明するが、特殊な事情もあった。
三菱マテリアルは、子会社の北菱産業埠頭が運営する「美唄炭鉱」を北海道美唄市に有しており、
「(国内炭の使用には)北海道から青森への運送はコストが安く済むといういい条件もあった」(広報IR室)
と述べる。
石炭のスポット価格は、現時点で国内産が100ドル前後、海外産で120~130ドルほど。国内炭の方が安いが、運送コストを考えると、北海道に近い工場で使用しない限り効果的なコスト削減にはならない。さらに、炭鉱で掘る量も限られていて、三菱マテの場合、青森工場のみの使用、しかも全使用量の3分の1の2万トンに限定された。