一人息子を線路に突き落とされ、殺された父親(70)のテレビのインタビューが見た人の涙を誘っている。父親は、はらわたが煮えくり返るような思いだとしながら、「社会復帰したら、世の中のためになる青年になって欲しいと思います」と話した。昨今は「犯人は死刑にしてほしい」といった被害者が多い中で、「なかなか言えることではない」と話題になっている。
「世の中のためになるような青年になってほしいと思います」
事件はJR岡山駅で2008年3月25日深夜に起こった。岡山県職員の假谷国明さん(38)が帰宅途中に、高校を卒業したばかりの18歳の少年に線路に突き落とされ、列車に轢かれて死亡した。
少年は大阪府に住んでいたが、無差別殺人を目的に岡山に来たのだという。そして、たまたま、ホームの列の先頭に立っていた假谷さんを見つけ、無言で近づき、両手で背中をひと突きした。警察の調べで少年は、
「人を殺せば刑務所にいける。誰でもよかった。ホームで一番前の人を突き落とした」
と供述しているという。
假谷さんの重体の知らせを聞き、奥さんと2人の娘、そして父親の要さんが病院に駆けつけた。それが事故から1時間後の午前0時。假谷さんはその4時間後に死亡した。要さんがインタビューに応じたのが、假谷さんが死亡し司法解剖をしている最中だった。
そんな状況なのに、要さんは、
「少年には罪を償っていただいて、できれば、社会復帰なさったら、世の中のためになるような青年になってほしいと思います」
そして、
「本当を言うと、はらわたが煮えくり返るような気持ちですけど、息子は死んでしまったのですから…」
と語った。