「東京の中小企業を元気にする」と息巻いていた新銀行東京の「生き残り」がむずかしくなってきた。東京都は2008年2月20日、議会に新銀行東京への追加出資を要請。25日から議会での本格審議に入っていて、都議会民主党らによる石原慎太郎都知事や旧経営陣への責任追及がはじまった。そうした中で、業界やマスコミからは「もはや撤退するしかない」という声が強まっている。
新銀行東京が20日発表した再建策では人員削減や店舗の閉鎖で、2012年までの黒字化をめざすという。ただ、「追加出資なしでの存続は無理だろう」(銀行関係者)というのが大方の見方だ。設立当初から、民間金融機関からも煙たがられる存在で、「救済」に手をさしのべる金融機関も期待薄で、再生への道はまったく見えていない。
2月26日付の読売新聞社説は「もう店じまいすべきだ」とし、再建計画は説得力に欠け、提携も困難で、「これ以上の負担は都民の理解をえられない」と結んでいる。
追加出資しないのが「条件」だった
東京都が「延命」の理由をどう説明するかが見物だ
新銀行東京は、2003年3月に石原都知事が2期目の選挙公約の「目玉」として掲げた。当時、銀行の貸し渋りなどで資金調達がむずかしかった中小企業の「支援」を目的に、東京都が1000億円の「税金」を投じて設立。05年4月に開業したが、「売りもの」にしていた無担保・無保証の融資が焦げ付いて、07年9月期には936億円の累積赤字を計上していた。 新銀行東京の設立を審議した際、都議会民主党は「再出資を行わないこと」を条件にしていた。ところが、東京都は08年2月20日、400億円の追加出資を議会に要請した。民主党の幹部は「まだ400億円の根拠も聞いていないし、経営内容も精査しなければわからない。そもそもの(追加出資を必要とする)根拠を示すことができないのであれば、認められない」と話す。
設立時の審議では全国銀行協会などを招いて意見聴取するなど時間をかけたことを引き合いに、「責任問題ばかりでなく、存続させるにしても、どうやるのかが(都には)ない」(民主党の幹部)と、じっくり徹底追及する構え。共産党東京都議員団も2月13日に「都がいかなる追加出資も行わず、ただちに破たん処理に踏み出す」旨の申し入れを、石原都知事宛てに行っている。