銀行の不動産向け融資にブレーキ――2007年6月に施行された改正建築基準法をきっかけとした住宅着工件数の減少のせいで、銀行が建設や不動産業者向けの融資審査を厳格化している。都内の住宅地の地価は07年夏あたりがピークと見られ、ここにきて下落し始めたのも一因になっている。事態を憂慮した金融庁は2007年12月に開いた地方銀行との行政懇談会で、各銀行の頭取らを前にして財務面で問題のない、中小の建築・不動産業者などへの融資には前向きに取り組むよう求めた。
都内の「住宅地」の地価のピークは07年夏あたりだった
都内では地価下落が始まっている(写真はイメージ)
野村不動産アーバンネットの「住宅地地価」価格動向(07年10月1日)によると、東京都区部でも世田谷区給田、杉並区浜田山、同区荻窪、中野区白鷺といった「優良住宅地」で地価が下落し始めている。たとえば、杉並区宮前4丁目(最寄り駅、京王井の頭線・久我山駅)は07年7月に1坪200万円だった価格が10月には190万円に下がった。東京の地価は再び上昇に転じたと報じられてからまだ1年も経っていないのに、すでに「頭打ち」の状況が見え、全体が下落に転じる兆しが出ている。
「三友地価インデックス」という独自の指標で地価の動きを追っている不動産鑑定会社の三友システムプレイザルの井上明義社長も、「06年1-3月期から1年余続いた今回の地価上昇のピークは過ぎた」と話す。同社の調べでは東京都内の都心部(千代田、中央、港、新宿、文京、台東、渋谷、豊島の8区)は2005年10-12月期に地価上昇に転じて以降、大きく上昇してきたが、「対前年比では上昇しているものの、直近の3か月では下がっている。住宅地の地価は昨夏あたりがピークだったのではないか」と、すでに地価下落がはじまっているとし、それによって建設や不動産業者の財務内容が悪化、さらには「日本でもノンバンクの不動産担保融資が焦げ付く可能性が出てきた」(井上社長)と指摘する。
こうした中で、銀行が融資を厳格化している。その理由は建設や不動産業者の財務内容の悪化があるが、じつは昨年10月1日からの「信用保証制度の変更」もある。新たに導入された「責任共有制度」は、これまで100%保証していた信用保証協会の保証が80%になり、残りの20%を銀行が保証する仕組み。これまで銀行は貸倒れリスクをまったく負わなかったが、新たな制度は貸出債権の20%分の貸倒れリスクを負う。つまり、銀行は自分の懐が直接痛む可能性が出てきたため、事前の融資審査を厳しくしたというわけだ。