声優・藤田咲さんインタビュー(下)
「初音」ユーザーの一途な思い その連鎖がブーム作った

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   ユーザーが自作の歌を歌わせることができるパソコン用ソフト「初音ミク」。爆発的なブームになった原因はなんだったのか。「ミク」の声を担当した声優の藤田咲さんに聞いた。

「初音ミクで初めて藤田さんを知った」という声も多い
「初音ミクで初めて藤田さんを知った」という声も多い

――「ミク」の歌を聞いて自分が歌っている、と思う時ありませんか?

藤田 そう言われることもあるんですが、私自身は「初音ミク」が歌っている、という感覚です。自分で歌うと自分の表現があると思っているからです。「初音」さんの場合は、その、二日間かけて作った「初音ミク」というキャラクターが私の中でちゃんと確立していて、あとはクリプトンさんにお任せしますという形でお別れをしてきましたので。クリプトンさんの力で一つのキャラクターになっているのを見て、素直に「わー素晴らしい」と思っているんです。

――となると、藤田さんにとっての「ミク」はどんな存在?

藤田 「双子の妹」みたいな存在でしょうか。これには説明が必要ですよね。アニメだと自分が経験したものを切り取って表現している部分が非常に多く、3ヶ月とか半年という期間で、一緒に成長しているといった感じです。「初音」さんの場合は…何て言ったらいいのか試行錯誤したんですが、自分の分身だけど私は「初音」さんに魂を入れた段階でお別れをして、そのあとのストーリーはユーザーさん、一人一人の力で作って下さった、と捉えているんです。100人ユーザーさんがいたら100通りの「初音ミク」のキャラクターが存在している。だから、大きなムーブメントは全てユーザーさんのおかげなんですよね。

――それでも藤田さんの名前が、アニメやゲームファンだけでなく広く知られるようになったのは「ミク」の存在が大きいですよね。

藤田 別の収録現場でも「初音ミクって、咲ちゃんがやってるんだよね!?」と声をかけられたり、「初音ミクで初めて藤田さんを知りました」という方がいたりなど、とても嬉しく思っています。

――ところで、藤田さんが声優になったきっかけは何だったんですか?

藤田 子供の頃からマンガがすごく好きで、声優という職業があるのは知っていたんですが、それは、お花屋さんになりたい、とか、アイスクリーム屋さんになりたい、という、なりたい職業の一つにすぎなかったんです。中学生のときに映画館で「デジモンアドベンチャー僕らのウォーゲーム!」を見て、感銘を受けたのがきっかけですね。もともとは「ワンピース」が目当てで映画館に行ったのですが、たまたま併映されていた「デジモン」を観て、こういう作品に出る声優さんは素晴らしいな、と。「是非!」なりたいと思うようになりました。

人の感性に真摯に向き合って、表現していきたい

――声優になるための養成所に通い、「アニメTV」のレポーターになったのがデビューのきっかけですね。

藤田 大学も行きたかったので、声優になりたいな、勉強したいな、という気持ちをグッと我慢して受験勉強しました。無事合格できたので、養成所に通いは始めました。その頃に「アニメTV」のレポーターのオーディションがあって。私はもともとすごい人見知りで、人と話するのが苦手だったんですけど、アニメ業界のプロデューサー、ディレクターといったクリエーターの方々とお話できる貴重な経験をさせていただいて、本当に勉強になりました。

――これからどんな声優を目指していきますか。

藤田 私は子供の頃に感銘をうけた声優さんに憧れているんです。作品も、人と人の温もりが伝わるものが好きです。中学で観た「デジモン」も誰かのために一途になれる様が描かれていて好きなんですよ。「初音」さんのユーザーさんたちも、一途な思いをもって「初音」さんに真摯に向き合い、その作品が評価されています。そして「初音」さんに興味を持つ方がどんどん増えていった。そういう連鎖はとてもいい現象だと思います。私も人の感性というものに真摯に向き合って、自分で表現できたら素晴らしいと思っていて、そんな作品に出会えたらいいなと思っています。自分が関われて幸せだなと思える作品に出会える事が、声優になった自分へのご褒美だと思っているんです。

藤田咲(ふじたさき)プロフィール
1984年10月19日生まれ。東京出身。
主な出演作とキャラクター:TVアニメ「ときめきメモリアルOnly Love」弥生水奈。同「がくえんゆーとぴあ まなびストレート!」小鳥桃葉。ドラマCD「ういういdays」倉持妙子。 「VOCALOID 2 キャラクター・ボーカル・シリーズ01初音ミク」。ラジオ「V-kingdom」マンスリーVプリンセス(OBC)ラジオなど。所属:アーツビジョン。

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