大阪府松原市のコンビニエンスストアのコンセントを使って携帯電話の充電をしていたとして、中学生2人が窃盗容疑で書類送検されていた。充電に使われた電力はわずか1.5ワット、電気代は1円にも満たない。実は、過去にもこれに類似する充電行為が「窃盗」とみなされ書類送検された例は複数あり、警察側からすれば「ジョーシキ」の範囲のようだ。たとえそれが1円以下の電力であっても「窃盗は窃盗」なのだ。
「1円でも窃盗は窃盗。きっちり処理する」
コンビニのコンセントを無断使用して中学生が書類送検された(写真はイメージ)
大阪府松原市のコンビニエンスストアの外壁にあるコンセントを無断使用し、携帯電話を充電したとして、大阪府警松原署が中学生の少年ら2人を窃盗容疑で書類送検していたことが、2007年9月19日までにわかった。松原署の調べによると当時中学2年の少年は、07年3月15日午前1時ごろ、コンビニの看板用コンセントに携帯電話の充電器を15分にわたって差し込み、約1.5ワット(約1円相当)の電気を盗んだ疑い。
調べに対し、男子生徒は「携帯電話の電池が切れ、友達からのメールに返信したかった」などと話したという。男子生徒は、電池が切れたことで電気を充電できる場所を探し、コンビニエンスストアで充電しているところを巡回中の警官が発見した。男子生徒がこの店舗で充電するのは初めてだった。
同署は、男子生徒について「素直で普通の中学生」としているが、「1円でも窃盗は窃盗。何でも注意すれば済むという話ではなく、きっちり処理するのが基本。(無断の充電で処理するのは)決して珍しいことではない」とJ-CASTニュースに対して話している。
とはいえ、喫茶店やファミリーレストランで軽い気持ちで電気を拝借――なんてことはないだろうか。あるファーストフード店の店員も
「中高生が携帯電話の充電を勝手にしているのは日常茶飯事。女子高生がコテを使ったり、トイレに充電中の携帯電話が放置されている、なんてこともある」
と話す。
日本マクドナルドホールディングスは「掃除用のコンセントの使用はご遠慮いただきたいと考えている。お客様にご協力いただけるように、見つけたら現場で対応するようにしている」としている。一方、同社は一部の無線LANが使用できる店舗でのコンセントについては開放しており、パソコンを利用するビジネスマンなどから好評のようだ。
「無断充電」が犯罪として摘発された例は少なくない
本来使うべきでないコンセントから勝手に電気を拝借してしまう人にそれほど「犯罪意識」はない。しかし、過去には「無断充電」が犯罪として摘発された例も実際にあるから要注意だ。
大学生がパン屋のコンセントを使って携帯電話を充電、5銭相当の電気代の窃盗容疑で摘発(06年5月)。出張中の会社員が無断で駅構内の清掃用コンセントの電源でノートPCを使用し、電気代約1円の窃盗容疑で摘発(04年2月)。飲食店の外にあるコンセントをつかって約5分間にわたって携帯電話を充電、約1円の窃盗容疑で摘発(03年9月)――いずれも「無断充電」が「窃盗」とみなされ「御用」となっている。
元検察官の落合洋司弁護士は、「無断充電」が「即、窃盗になるとは限らない」と指摘する。「充電の承諾」が店などから表示されてなくても、客側が承諾があるものと信じてしまった場合などは、犯罪の成立状況を満たしていないとされる可能性もあるという。ただし、明らかに「掃除用のコンセント」の場合などは「危ない」というわけだ。
「コンセントを使う場合は管理している人に聞くことは必要。犯罪にならなくても無断で充電することは人の常識に欠ける。(今回の1円の窃盗で送検された事件の場合)モラルの低下に警鐘を鳴らすという意義を読み取ることもできなくはない」
ただ、落合弁護士は、今回の事件について次のようにも指摘する。
「敢えて立件する価値があったのかは疑問がつきまとう。これで立件するなら、ほかにも立件すべきことはあるのではないか。警察の冤罪事件などの不祥事がある中で、国民が見たら、警察のバランス感覚が狂ってるんじゃないかと思うこともありうるだろう」
大阪府警松原署には「1円でそこまでするのか」といった抗議の電話が複数あったという。