バーチャルアイドルが合成音声で、まるで本物の人間のように歌うソフト「初音ミク」が異常人気だ。通常なら年間で1000本売れれば大ヒットといわれるジャンルだが、発売後2週間で3500~4000本も売れ、生産が追いつかない。「ニコニコ動画」で検索すると、「ミク」が歌う楽曲が400本近くもアップされている。そして、おバカなセリフを言わせたり、音痴に歌わせたりするものまで大人気になっていて、「これからはアホなアイドルが流行る」といった論評がネット上に出てきた。
「もう人間の歌手なんていらねんじゃね?」
「初音ミク」がブレイク中だ
「初音ミク」はクリプトン・フューチャー・メディア(本社:札幌市)が企画・制作し2007年8月31日に発売したボーカル・アンドロイドソフト。ユーザーがパソコンの画面上でメロディと歌詞を入力すると、16歳のバーチャルアイドル初音ミクが歌ってくれる。その歌声は「萌え」系で、単に歌うだけでなく、ハモったり、ビブラート、ブレス(息を吸う)音まで付いている。「ニコニコ動画」には400近いミクが歌う楽曲がアップされていて、「もののけ姫」や「you」といったアニメ主題歌を聞いた閲覧者からは、「米良よりうまい現実」「泣けてくる」「もう人間の歌手なんていらねんじゃね?」など驚きのカキコミが出ている。
クリプトン社はJ-CASTニュースの取材に答え、本来ならばこうしたソフトは、技術の進化をアピールし音楽制作のプロに買ってもらうものだが、
「アイドル風の女の子が綺麗な声で歌うというコンセプトが新しいビジネスモデルになるのでは」
と考えて製作した。「ニコニコ動画」にミクの歌声がアップされたことをきっかけに、「把握できない」ほどの注文が来たのだという。
「ニコニコ動画」にアップされた曲は、制作した人の技術レベルやこり方によって、完成度に差が出ているが、ここに来て増えているのが、わざと音痴に歌わせたり、ギャグ用語を連呼させたり、イメージに合わない歌を歌わせ「笑い」を取ろうとするものだ。例えば、「ムーディ初音『右から来たものを左へ受け流す』の歌」「初音ミクでフタエノキワミ、アッー!」「初音ミクに組曲『シコシコ動画』を歌わせてみた」といったタイトルのものがある。
「萌え」系というのは、ポジションバランスが微妙で、少し傾いてしまうといきなり別の存在になる。ミクはアイドルなのだが、先のような一連の楽曲で「アホっぽい」というイメージが一方で付いてしまった。しかし、その「アホっぽい」がこれまた大人気なのだ。そのため、ネット上には「これからはアホなアイドルが流行る」などの論評がある。