旧日本軍のいわゆる従軍慰安婦について、米下院が「対日謝罪要求決議案」を本会議で採択した問題で、日本の主要新聞は社説やコラムの中で「事実誤認」「おろかな選択」「有害である」などと揃って批判論を展開した。しかし、朝日新聞だけは安倍首相が談話を表明して謝罪するよう要求しており、「孤立」が際立っている。
残虐性に前例がなく、「20世紀最大の人身売買の一つ」なのか
朝日以外の新聞各紙が米「対日謝罪要求決議案」について批判や疑問をあらわにした
米下院本会議は2007年7月31日未明(日本時間)、旧日本軍によるいわゆる従軍慰安婦問題で日本政府に公式に謝罪を求める決議案を可決した。決議案は1月末にマイク・ホンダ議員が提出したもので、2007年6月27日(日本時間)には米下院外交委員会で可決された。決議案は、旧日本軍の「強制集団売春制度」によって、「集団レイプ」「堕胎の強制」が行われたとするもので、「残虐性に前例がない」「20世紀における最大の人身売買の一つ」などと断じられている。さらに、本会議での可決が決まった翌日の米国では、ラントス下院外交委員長が、「(日本での)性奴隷の徴用を否定する試み」について「吐き気をもよおす」とまで批判していることなどが報じられている。
一方、国内主要紙の社説などでは「対日謝罪要求決議案」への批判のメッセージが満載だ。
2007年8月1日付け日経新聞は「過剰反応は無用だが、日米関係への悪影響に目をつぶれない」とした上で、日本政府が安倍首相も含めて公式に謝罪してきたと強調。「日本で聞く違和感は、米先住民の過去の待遇を日本の国会が批判するのを米国人が聞く時の感覚に近いだろう」と以前同紙が主張したときと「同様の感覚を禁じえない」とした上で、
「米側での対日イメージの低下や日本国内での反米感情の高まりにつながりかねない動きは、双方にとって有害である」
と日米関係の観点から批判している。
同日の読売新聞は、
「明らかな事実誤認に基づく決議である。決議に法的拘束力はないが、そのまま見過ごすことは出来ない」「事実誤認には、はっきりと反論しなければならない。誤った『歴史』が独り歩きを始めれば、日米関係の将来に禍根を残しかねない」
と「事実誤認」であることを繰り返し強調。読売新聞、産経新聞はともに中国系の反日団体が決議案の提案者マイク・ホンダ民主党議員らを支援する動きがあったことを挙げている。
産経新聞はさらに「この団体は中国政府と密接なきずなを持ち、歴史問題で日本を非難している。事実誤認を正すための官民の一層の努力が必要である」と指摘している。産経新聞に掲載された論説「産経抄」では「米議会はなぜかくも愚かな選択をしたのだろう」「厚顔ぶりにあきれてしまう」などと激しく批判している。
また、毎日新聞の社説も、
「米国が主張する原爆投下正当化論への批判は日本に根強い。対テロ戦争やイラク戦争での人権侵害には国際法違反の指摘もある。『正しい歴史』を振りかざすだけでなく、みずからの過ちを振り返る謙虚さを米国には求めたい」
と米国の強硬な姿勢に苦言を呈した。