歯医者は儲かる――そんなイメージはもう捨てた方がいいのかもしれない。歯科医の「100人中5人は所得ゼロ」、5人に1人は月間所得25万円でワーキングプア寸前、という分析もある。さらには、「夜逃げ」した歯医者もいるというから驚きだ。「格差社会」が、一般的に高所得が望めるとされてきた歯科医の世界にも到来した。
コンビニよりも歯医者のほうが多い
今やコンビニより歯医者を見つけるほうが簡単だ
背景には歯科診療所の過剰がある。厚生労働省によれば、医療診療所の数は6万7,441件(2006年調べ)。全国に4万店舗あるといわれるコンビニエンスストアの数をはるかに上回っている。さらに、人口10万人あたりの歯科医師数は全国平均72.6人(04年調べ)で、東京都にいたっては119.9人に上る。1975年に37.5人、98年に67.7人、今はそれからさらに増加し続けている。10万人あたりのコンビニ店舗数が33店舗前後(02年経産省、04年帝国書院調べ)であることを考えれば、その「多過ぎさ」が分かる。もはや、「コンビニよりも歯医者が多い」とは歯科医師からすれば「常識」だ。
こうした過剰な歯科医師の数が、歯科医師に「格差」をもたらし始めている。
厚労省が公表している「医療経済実態調査」(中央社会保険医療協議会調べ)によると、05年6月時点での個人歯科診療所の差額収支(医業収入から費用を引いた実質的な収入)は月当たり約135万円。個人歯科診療所の歯科医師数は平均1.2人。単純計算で月給100万円ほどになるが、これに歯科衛生士・事務職員などを加えれば、個人歯科診療所の構成員は4.2人が全国平均。歯科医の収入は100万から大きく遠のく。
さらに、経済誌「月刊東洋経済」(07年4月28日・5月5日合併)は、この「医療経済実態調査」に『歯科医療白書』(03年、日本歯科医師会)の分析を加え、「5人に1人の月間所得は25万円程度」「100人中5人は所得ゼロ」であることを明らかにしている。つまり、20人に一人は「ワーキングプア」、5人に1人はそれに近い状態というわけだ。
98年には厚労省の「歯科医師の需給に関する検討会報告書」で歯科医師の「供給過剰」について議論されたこともあったが、「未熟な開業医が多く排出される」という懸念に基づくもので、歯科医師の収入の「格差」についてはクローズアップされることはなかった。J-CASTニュースは厚労省に「収入の格差」について問い合わせたが、「それ(格差)についての特別な調査を行っていないため、(実態は)分からない」との返答が返ってきた。