「アルコールはどの種類でも取り過ぎはだめ」が新常識
しかし御巫さんによると、この「焼酎ならOKが常識」は今では、専門医の間では「非常識」と烙印を押されている。「アルコール全般のとり過ぎはだめ」が新常識だ。日本痛風・核酸代謝学会が2002年にまとめたガイドラインでも「酒(の種)類を問わず過剰摂取は厳格に慎むべきだ」としている。
アルコールが体内で分解されるとき、尿酸の体内生産を促す働きをし、かつ排泄を妨害する作用がある。二重に悪い働きをするというのだ。焼酎も飲み過ぎは尿酸値を高める結果になる。「常識」が「間違い」という情報を拡大解釈し、「ビールでも、いくら飲んでも大丈夫だ」と都合のよい「新常識」を唱える酒飲みもいるようだが、あくまで「適量ならば」が大前提だ。
では適量とは。一般向けの痛風対策講座などで話をすることも多いという、帝京大学薬学部の金子希代子教授に話を聞いた。
「強いて言うならビールなら中ビン1本、焼酎ならシングル2杯分が目安」
アルコール全般の適量化だけでなく、食生活全体のカロリー制限やバランスが大切という。肥満は尿酸値を高くする危険要因だ。週に何日か酒を抜き、酒類でない水分を多く採ることも必要だ。ストレス対策も重要だそうだ。
確かに摂取されたプリン体が吸収されるのは一部だ。吸収効率を考慮に入れて計算すると、体内で生み出すプリン体量と口から摂取する量は概ね「3対1」。しかし、これは野菜や魚中心の健康的な和定食などでカロリーも適量に抑えて3食食べた場合の計算。酒を飲んだり過食したりすると、そうはいかない。飲食物の尿酸値への影響も決してないわけではないからだ。カロリー制限に加えて、食生活のバランスも考えて、「結果としてプリン体摂取も制限される」状態が望ましい。
引き合いに出されるビールよりプリン体含有量が多い「健康食」は多い。ビール350ミリリットルでプリン体約25ミリグラム(代表例)に対し、金子教授の調べでは、納豆(100グラムあたり、以下同じ)に113.9ミリグラム、干ししいたけ379.5ミリグラム、マグロ157.4ミリグラムなど。ちなみに鶏レバーは312.2ミリグラム。ガイドラインでは1日当たり摂取量は400ミリグラム以下が望ましいとする。ただ、これも完全に実行するのは困難だし、1週間なり1ヶ月の単位で注意していくしかないという訳だ。
プリン体の含有率だけを見て「何だ。ビールは大丈夫ではないか」と思うのは早計だ。ビールはアルコールもカロリーも含む。あくまで適量が大切で、「ほどほどに」が現状の新常識のようだ。もっとも御巫さんは「専門医へ相談する、が常識」。「不勉強な医者」へ行くと、不十分な「常識」指導を受け、「すぐに薬を使いたがる」からだそうだ。