スーパー大手のイオンが、会員制の経済月刊誌「選択」を名誉棄損で訴えた。掲載された記事の何が、問題なのか。
イオンは2007年4月18日、「選択」を発行する「選択出版」などを相手取って東京地方裁判所に損害賠償請求訴訟を起こした、と発表した。「根拠を有しない著しく公正さを欠いた報道を行い、当社の名誉を棄損した」などとして、5,500万円の損害賠償、「選択」誌上と新聞での謝罪広告の掲載、ウェブサイトからの記事の削除などを求めている。
問題とされたのは、07年3月号に掲載された「イオンが壊した日本の『地方』 郊外巨大ショッピングセンター展開の罪」というタイトルの特集記事。記事中では、イオンの全442店舗のうち、4割が首都圏以外の地方に展開されているとした上で、福井県鯖江市など、イオン出店をめぐって地元との摩擦が起こっている例を少なくとも4つ紹介。(1)イオンの出店で地元の中心商店街がさびれたり、「ゴミ収集車の巡回範囲が広がる」などして行政コストが増加する(2)イオンに買い物に行くために車を長距離運転する客も多く、地球環境を悪化させている。などと主張。
「日本の地方の崩壊が加速するのは間違いない」
「選択」の記事をめぐって、イオンは5,500万円の損害賠償を求めている
「さらに巨大化し、政治的な影響力も強めつつあるイオンが反省もなく、自己利益のために突進すれば、日本の地方の崩壊が加速するのは間違いない」
と結んでいる。
これに対してイオン側は、(1)自治体の財政悪化は行政運営の問題などさまざまな要因が考えられ、自社の店舗運営との因果関係は認められない(2)イオンでは多数の環境保全活動を行っており、数多くの表彰もされている、などと反論。「選択」の記事は「著しく公正さを欠いた報道であり当社の名誉を棄損している」と主張している。
損害賠償の額5,500万円について、イオンのコーポレート・コミュニケーション部では、
「この額が相当だと判断した。それ以上の詳細については、訴訟にかかわることなので差し控えたい」
としている。
一方の選択出版では、
「訴状がまだ届いていないので、何ともコメントのしようがない」
と話している。