「『精子』や『卵子』でインターネット検索すると青少年に有害では」。2007年3月末に公表された文部科学省の教科書検定で、「倫理」の教科書を巡りこんな疑問が示された。当初、米国の生殖産業について企業のホームページにアクセスするなどして、この問題を考えさせる課題が出ていたが、同省が懸念を示す意見をつけた。アダルトサイトへの接続の危険性などに配慮したもので、「アクセスしたりして」の部分は削除になった。
「精子」で検索したうち一つのHP。高校生にとって有害?学習素材?
同省教科書課によると、問題の教科書は東京書籍の高校生用「倫理」。精子や卵子の提供などを仲介する米国企業があることを紹介、この企業のHPを実際に見るなどし、生殖の尊厳やビジネスとの関連を考えさせる課題を出していた。これに対し、同省は「直接アクセスさせるのは、学習活動として必要な配慮に欠ける」と指摘。「精子や卵子といった単語で検索した場合、どんなものが出てくるか分からない」とアダルトサイトへの接続を懸念していた。
実際、グーグル検索で「精子」を調べてみると、不妊治療を巡るサイトのほか、アダルトサイトを思わせる表記「○○で精子が○○エロ画像」など650万件がヒットした。
「意見が分かれる問題」?
「意見が分かれる問題だ」と指摘するのは御茶の水女子大学文教育学部の坂元章教授。メディア心理学や社会心理学が専門だ。「有害情報から青少年を守る」のか「学習機会を制限すべきでない」のか。米国では有害情報を遮断できるフィルタリング・システムの導入を巡り、裁判になった例もあるという。その上で、坂元教授は今回の文科省の意見について、「省としては、従来から有害情報遮断の取り組みを進めており、今回はその流れに沿ったもの」と「省の意見としては、概ね妥当な判断」とみている。
もっとも今の高校生はアダルトサイトなどとっくに見ているはず。「余計なお世話」のような気がするが。