春闘の相場形成に影響力を持つ自動車、電機大手メーカーの労組が要求した2007年の春闘要求に対する経営側の回答(3月14日)は、大半で2年連続の賃上げを飲む形になった。ただ電機で06年同様横並び回答が崩れるなど、内容は明暗さまざまで、業績の違いを反映した個別闘争の色合いを一段と深めた。消費低迷による景気失速を懸念する政官界も今春闘の成果に注目しているが、他の主要企業や中小企業などの交渉に弾みをつけられるかどうかは微妙な状況だ。
電機大手の労組は、30歳、35歳のモデル年齢で月額2,000円の賃金改善を横並びで要求していたが、経営側は、業績不振の日立製作所を除き、実質1,000円の賃上げを回答した。単純な金額の比較では06昨年実績の500円から倍増した形となる。
諸手当のアップ分などを加えて回答
「国際競争は厳しさを増した」と、自動車業界でも満額回答を引き出せず
ただ07年の回答は昨年までと異なり、多くの企業が、労組が指定したモデル年齢での賃金改善分(500円)に加え、諸手当のアップやその他の賃金制度改善分(500円)を足し合わせた数字を回答額とした。06年実績(500円)以上の回答は拒むものの、昨年以上の成果を強く求める労組側に配慮して、経営側が回答額を「かさ上げ」したのが実態だ。
電機メーカーの労組などで作る産別組織、電機連合は今春闘で、“真水”での1000円の賃上げ実現にこだわった。景気回復が続く中で勤労者への分配が増えないことが社会問題になり、「昨年以上」を取らなければ労組の存在意義が問われるとの危機感があったからだ。しかし交渉終盤まで経営側の態度は硬く、労使が妥協して、従来春闘の成果に含めなかった諸手当のアップ分などを加えた回答にせざるを得なかった。
同連合の中村正武委員長は14日、「最終赤字の社もある中で昨年以上の賃上げを勝ち取った」と自画自賛したが、各種手当ては退職金や一時金の算定基準には含まれず、給与による賃上げとは性格が異なる。ある電機大手の人事担当役員は、「労組の顔を立てて化粧をほどこした」と07年春闘を総括した。