「税金の無駄使いなのではないか」として問題視されることも多い、議員による海外視察だが、この報告書を、公明党所属の福岡市議団が他のウェブサイトから「盗作」していたことが明らかになった。共産党の調査で分かったもので、批判を受けて、公明党側はこの報告書を撤回、公費での海外視察を自粛することになった。
問題とされているのは、公明党福岡市議団に所属する議員3人が2006年2月6日に提出した海外視察旅行の報告書。05年10月に、10日間の日程で、パリ(フランス)・インターラーケン(スイス)・フィレンツェ(イタリア)・ローマ(イタリア)の4都市を訪問した様子を24ページにわたってまとめたものだ。
ウィキペディアなどを引き写す
問題とされた海外視察報告書。再提出後は枚数が大幅減
なお、同市議会では、議員報酬や政務調査費とは別に、議員1人当たり100万円を上限に、海外行政視察のための予算が認められている。議会事務局の資料では、「99万9,490円」など、上限ギリギリまで予算が消化されているケースも目立つ。
この報告書が問題視された経緯はこうだ。07年2月初旬、「公費による海外視察は廃止すべき」との立場を取っている共産党市議団が、議会図書室で海外視察報告書を調査していたところ、今回問題とされた報告書に目がとまった。同市議団では、当時の様子をこう振り返る。
「報告書にはずさんなものが多い中で、珍しくしっかりしたものだったため、『出来すぎている』ということになり、試しに報告書の中の長めの言葉で、インターネットで検索してみたんです。そしたら『ドンピシャリ』で、まったく同じ文章がヒットしたんです」
J-CASTニュースでも、報告書を入手してみた。フィレンツェの概要を紹介する箇所は
「フイレンツェ都市計画課の説明によると、フィレンツェは屋根のない博物館とも表されるほど、希有な建築物や彫刻などの芸術作品が残っています。もともとフィレンツェはエトルリア人によって創設されローマ殖民都市がおかれました」
という書き出しで始まるが、ウィキペディアの「フィレンツェ歴史地区」の項目にはこう書かれている。
「フィレンツェは屋根のない博物館とも表されるほど、稀有な建築物や彫刻などの芸術作品が残る。もともとフィレンツェはエトルリア人によって創設されローマ殖民都市がおかれた」
さらに、報告書ではフィレンツェの高齢者施設を視察した時の感想を
「ガブリエル所長にお話を伺っているうちに、強い地方色や格差があり、地方主義のあることがわかりました。イタリアはかつて小王国や独立色の強い都市の大富豪の支配により分立していましたので、もともと地方の『おらが国』という意識と生活が強く根付いていたものといえます」
としているが、「日本福祉施設士会」のウェブサイトには、こんな文章がある。
「各訪問地でのお話しをうかがううちに、強い地方色や格差があり、地方主義のあることがわかります。イタリアはかつて小王国や独立色の強い都市の大富豪の支配により分立していましたので、もともと地方の『おらが国』という意識と生活が強く根付いていたものといえます」
これを「偶然の一致」ということは難しい上に、報告書には出典らしきものは記されていない。通常ならば、「盗用」「盗作」「パクリ」といったそしりを免れない。共産党側は
「どこか別のものから転載されている、ということが確認できなかった部分が2割」
と話しており、これが本当だとすると「8割がパクリ」ということになる。