日興コーディアルグループをめぐる報道合戦が繰り広げられている。一つは「シティグループへの傘下入り」、もう一つは「有村純一前社長らに30億円の損害賠償請求」という特ダネだ。真相は定かではないが、東証の上場廃止阻止を狙う日興が、マスコミを利用して「再生」をアピールした―こんな憶測が業界に流れている。
時事通信が特ダネ、各紙が大きく報道
時事通信は「シティグループへの傘下入り」をめぐる特ダネを配信
2007年2月23日金曜日の午後9時ごろ、時事通信が特ダネを配信した。「米金融大手のシティグループが日興コーディアルグループを事実上の傘下に収める」「シティは3月にもTOB(株式公開買い付け)を行い、日興株の33.3%超の取得を目指す」「東証が日興を上場廃止とした場合はシティが日興を100%の完全子会社とすることもありうる」など、シティの日興に対する提案を詳細に報じたもの。朝日、毎日、読売、日経などライバル各紙は大慌てで後追いし、結果的に翌24日付朝刊各紙は1面トップで「米シティ 日興を傘下へ交渉」「日興、シティ傘下入り」などと大きな見出しで報道し、各社とも同着となった。
これについて、マスコミ関係者の間から「日興もしくはシティの時事通信へのリークではないか」との見方が出ている。時事通信は朝日、毎日、読売を含む全国紙や在京キー放送局にニュースを配信している。大手紙は時事通信の配信記事をそのまま使うことは少なく、あくまで「参考」とする程度だ。これを逆手に取れば、時事通信に特ダネを配信させると、新聞、テレビなどに満遍なく情報を提供できる。従って、正式な報道機関向けのリリースはできなくとも、時事通信に情報を流せば、瞬時に各社が追いかけ、事実が確定している正式発表と同じ効果が得られるというわけだ。
これがライバルの共同通信だとこうはいかない。大手紙は海外ニュースの配信では共同と契約しているが、国内ニュースについては配信を受けていない場合もあるため、共同通信が配信した国内ニュースを全紙が後追いできるとは限らない。このため、時事通信がリーク先には便利、という面はあるようだ。