外務省は2007年2月13日、オーストラリア人ジャーナリストが皇太子妃雅子さまについて書いた単行本「プリンセス・マサコ(Princess Masako)」に、事実無根で皇室を侮蔑する内容が含まれているとして、この本の著者と出版社に対して謝罪を求めるとともに抗議したと発表した。この抗議は世界中を駆け巡り、海外でも波紋を呼んでいる。そして、著者は海外メディアに対し「謝罪するいわれはない」と述べるなど事態は混沌としている。
著者はオーストラリア人で、東京特派員経験者
日本政府に抗議された「プリンセス・マサコ」の著者は宮内庁を猛批判
「プリンセス・マサコ」は、06年にオーストラリアで出版され、皇太子妃雅子さまの皇室内での苦悩などを取り上げた作品で、副題は「菊の玉座の囚人」。著者はオーストラリア紙の記者ベン・ヒル氏で、東京に特派員として滞在した経験を持つ。
外務省は2月13日に会見を開き、駐オーストラリア大使を通じてグレイ豪州外務貿易省副次官に抗議文を渡すとともに、宮内庁の渡辺允侍従長署名の抗議文も合わせて提出したと発表した。外務省報道官は会見のなかで、今回の抗議について、
「『日本国の象徴』であり『日本国民統合の象徴』としての立場にある天皇陛下をはじめとする皇室の方々、更には日本国民を侮辱するとともに、実態と乖離した皇室像を描いていることについて、日本政府としてこのような書物を看過することはできないということで抗議を行った」
と述べた。宮内庁の抗議文では、あきらかに事実と異なる箇所として、同書の「天皇には年間1,000以上の公務があるが、当たり障りのない行事への形式的な出席ばかり」という記述について、明らかに事実と異なると指摘。同書の記述によると「両陛下のなさっていることが無意味で形式的なことばかりと示唆しているように見える」として、「(両陛下が)ハンセン病問題に大きく関与してこられたことを全く無視している」と批判している。
一方、こうした日本政府の抗議の情報は海外でも報じられたが、関心はむしろ、「政府」が皇室について書かれた書物に抗議している、という事実に向いているようだ。
英BBCは「東京はプリンセス伝記に謝罪を求めている」と題して、政府の抗議を報じたほか、フランスの通信社AFP通信も13日と14日に「日本政府の抗議」を報じた。