トヨタ自動車の張富士夫会長と米フォード・モーターのアラン・ムラリー社長兼最高経営責任者(CEO)が2006年12月20日、東京都内で会談し、環境技術の研究・開発などで協力を検討することで一致した。経営不振で投資余力が低下したフォードに対し、事実上、トヨタが助け舟を出す構図だ。
トヨタは07年に米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜いて四輪車の生産・販売で世界一になることがほぼ確実だが、フォードと協力することで、北米市場で再燃しかねない経済摩擦を回避する狙いがあるとみられる。一方、業績不振が続くフォード側には、トヨタとの協力で早期の経営再建を図りたい意向がある。
燃料電池車などでの技術協力を模索
フォード側が会談について発表したプレスリリースはわずか2行
会談はフォードの要請にトヨタが応じ、約1時間にわたって行われた。両社の北米担当役員も同席した。トヨタ首脳によると、両社が同じ分野の研究開発での重複を避け、効率的に進めるべきだとの見解で一致した。今後、両社とも前向きに協力を検討するという。
研究開発での協力は、世界の自動車メーカーが開発を競い、トヨタが総体的に世界最高レベルにある環境技術が軸になりそうだ。ただ、トヨタはフォードに対し、すでにハイブリッド技術をトヨタグループの部品メーカー経由で提供しており、燃料電池車など他分野での技術協力を模索することになるとみられる。
トヨタはGMと米国で小型車を合弁生産しているほか、先進技術車の共同研究を行っている。フォードはマツダに33.4%を出資している。トヨタとフォードは、こうした互いの提携関係は維持、尊重する方針。
トヨタがフォードとの協力の検討に動いた背景には、米ビッグスリーと良好な関係を築いておくことが、トヨタの世界戦略に好影響をもたらすという読みがある。07年にも生産販売台数でGMを抜き、世界一になるトヨタにとって、今後の懸念材料の一つは北米市場での「日本車たたき」の再燃だからだ。