全国の高校で多発している必修教科の未履修問題で、教科書を発行する会社は思わぬ”特需”に沸いている。未履修の高校生は卒業までに補修を受けねばならず、それには教科書が必要になるからだ。全国の未履修問題が発覚した高校の中には、生徒に教科書だけは買わせているところもあれば、それさえしていないところもある。そうした高校では新たに買わせることになる。
教科書は4年に1度、文部科学省の検定を受ける。いま使っている教科書は4年前に検定に合格したもので、売れ残りは教科書会社が在庫として抱えたままのはずだった。それが、思わぬ事態で在庫一掃セールとなったわけだ。
総額は6,000万円近くに
文科省によると、540校で「必修漏れ」が
必修漏れが多い世界史など、歴史教科書でシェアの高い山川出版社や帝国書院、東京書籍、実教出版社などは、すでに数校から在庫の確認の問い合わせがあり、注文も入り始めているという。現在までのところは在庫で賄える範囲だが、一部の教科書会社では「すでに5,000部ほどの増刷にかかっている」(教科書会社の幹部)との情報もある。
文科省によると、履修時間が不足している高校生は全国で8万3,743人。未履修科目は複数にわたるが、たとえば「世界史A」の教科書は1冊635円だ。仮に、新たに買わねばならない教科書すべてがこの値段として計算してみると、教科書会社全体で約5,517万円の売り上げになる。
在庫切れの場合には、緊急に増刷することになる。そうなれば、「コストが5倍近くに跳ね上がる」(大手教科書会社)という。教科書会社には教科書を完全供給する義務があるので、2学期が終わろうとするこの時期であろうと、学校から注文が入れば応じなければならない。